足場には枠組足場や単管足場など、さまざまな種類があり、そのなかに「ビケ足場」という足場あります。
今回は、ビケ足場とはどのような足場か、ビケ足場誕生の背景、特徴、メリット・デメリットをご紹介します。
ビケ足場とは
ビケ足場とは株式会社ダイサンが1980年に開発したくさび緊結式足場の商品名です。
ビケ足場は日本初の緊結部にくさびを採用した足場で、建設業界に大きなインパクトを与え、広く普及したことから、その後登場した別メーカーのくさび緊結式足場のことも通称「ビケ足場」と呼ぶことがあります。
似た名称の足場に「ビティ足場」がありますが、ビティ足場は中高層建築用に使用される枠組足場の一種です。
ビケ足場と名前は似ていますが、全く異なるものとなります。
ビケ足場開発の背景
1972年に、労働安全衛生法が施行され、その関係省令である労働安全衛生規則で足場に関する規定が定められました。
新しい基準では、作業床の幅は40cm以上、床材間の隙間は3cm以下、開口部等への転落防止用の手すりの設置などが設けられ、これまでの丸太足場では基準を満たせなくなりました。
1980年に株式会社ダイサンでビケ足場が完成し、シンプルな構造でありながらも柔軟性に優れ、安全性、作業性、耐久性に優れていることから建設業界から多くの注目が集まり、急速に普及していきました。
その後いくつかのメーカーからくさび緊結式足場が登場し、くさび式足場が一般的なものとなり、1984年には、仮設工業会が独自の基準を設け、ビケ足場を含むくさび緊結式足場を認定します。
なお、ビケ足場の「ビケ」とは現場を美しく形作る「美形」に由来しています。
ビケ足場の主な部材
ビケ足場を構成する主な部材は以下の通りです。
手すりやブラケットについているくさびを支柱の緊結部にハンマーに打ち込んで組み立てるため、クランプなどの足場を繋げるための部材は基本的にありません。
・支柱
・手すり
・踏板
・ブラケット
・筋交
・階段
ビケ足場の2つの規格
ビケ足場はほかの足場と同様、インチ規格とメーター規格の2つの規格が存在します。
サイズが違うといっても数センチしか変わらないため、一見すると見分けがつきにくいため注意が必要です。
インチとメーターの2つの規格がある理由
インチ規格はアメリカの規格です。
もともと米国で開発された枠組足場はそのままのサイズで日本に輸入され、使用され始めました。
しかし、インチ表記のサイズは日本人にはなじみにくいことから、キリの良いメーター規格が新たに作られました。
とはいえ現在でもインチ規格がスタンダードとなっています。
ただ、メーター規格はインチ規格よりもやや小さいため、輸送コストを抑えるためにメーター規格を使用するケースもあります。
両者は併用できない
インチ規格とメーター規格は混ぜて使うことはできません。
足場は布板だけでなく、手すり、支柱、筋交いなど、複数の部材が規格ごとにサイズが異なります。
見た目では両者は見分けがつきにくいため、両方の規格を保有している場合は混ざらないように注意が必要です。
ビケ足場の設置基準
ビケ足場には、くさび緊結式足場の設置基準が適用されます。
ビル工事用と住宅工事用が存在する
くさび緊結式足場はビル工事用と住宅工事用があり、それぞれ設置基準が異なります。
・ビル工事用
くさび緊結式足場のうち、ビル工事等の建築、補修及び解体工事に使用される足場で、高さ45m以下で使用する本足場。
・住宅工事用
くさび緊結式足場のうち、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅の建築、補修及び解体工事に使用される足場。
ビル工事用足場が高さ31mを超える場合の安全措置
くさび緊結式足場の原則的な高さ制限は31m未満ですが、ビル工事用で使用する場合以下の措置を施すことで制限を超えて設置できます。
1.建地となる緊結部付支柱の最高部から測って31m超える地上までの緊結部付支柱は原則として2本組とする。
2.2本組は緊結部付支柱と足場用鋼管を緊結金具により堅固に固定する。
3.固定する緊結金具は足場用鋼管の上端部、下端部及び角層の腕木付近に取り付ける。
手すり先行工法
手すり先行工法は、足場を組み立てるとき、解体するときのいずれの場合でも常に手すりがある状態で作業ができるようにする工法です。
組み立てるときには、作業床の最上部に手すりを先行して設置し、解体時には最上部の作業床を取り除くまで手すりを残します。
作業床の上で作業をするときに手すりが常にある状態となるため、足場からの墜落や転落を防げる工法です。
ビケ足場のメリット
設置が簡単
ビケ足場はハンマーが1本あれば設置できるため、クランプなどの足場を繋げるための部材が必要ありません。
緊結部のついた支柱にくさびのついた部材をハンマーで打ち込んでいけば簡単に設置ができてしまいます。
施工期間が短い
ハンマーだけで簡単に設置できるため、組み立て、解体作業がほかの足場に比べて早く完了します。
そのため、作業時間が短縮でき、工事期間にも余裕が生まれます。
複雑な形状の建物でも対応できる
ビケ足場は組み合わせ方によって建物に合う形状の足場を設置できるため、狭い場所や複雑な形状の建物にも対応できます。
また、人力で組み立てるためクレーンなどが必要なく、狭い場所でも搬入・施工が可能です。
ビケ足場のデメリット
組立て時に大きな音が出る
ビケ足場は部材についたくさびをハンマーで支柱の緊結部に打ち込んで組み立てますが、その際に金属を叩く大きな音が出ます。
設置や解体の際には騒音が悩みの種となり、クレームの原因となる場合があります。
幅が狭い場所には設置できない場合がある
コンパクトで柔軟性の高いビケ足場ですが、隣家との境界線の間隔が狭すぎると設置できない場合もあります。
その場合はくさび式足場の代わりにブラケット一側足場などで対応します。
ビケ足場は幅広く活用されている足場
ビケ足場は1980年に開発された株式会社ダイサンの商品ですが、ほかのくさび緊結式足場の通称としても知られています。
施工性の良さや複雑な形状の建物にも対応できる柔軟性から、住宅などを中心に幅広く活用されています。
足場はビケ足場以外にもいくつかの種類があり、現場の状況や条件に合わせて適した種類の足場を設置する必要があります。