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足場からの墜落・落下防止のためのネット・幅木・手すり先行方式とは

建設現場では欠かすことのできない足場ですが、足場からの墜落や部材の落下事故はあとを絶ちません。

足場からの落下防止のために、法律では安全のためのさまざまな対策が取られています。

 

この記事では、足場からの墜落・落下防止対策として活用されている、安全ネット、幅木、手すり先行方式について解説します。

 

足場からの飛来・落下物による災害防止に関する法令

足場からの飛来物、落下物による災害防止について、厚生労働省は労働安全衛生規則の「労働者に対する措置」で、国土交通省は建築基準法の「主として第三者に対する措置」でルールを定めています。

 

さらに、足場からの墜落防止対策関係では、厚生労働省の労働安全衛生規則で平成27年に、「足場に係る改正労働安全衛生規則」「手すり先行工法等の『より安全な措置』」、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」を定めています。

 

建築基準法施行令第136条の5

工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離5メートル以内で、かつ、地盤面から高さ7メートル以上にあるとき、その他落下物によって工事現場の周辺に危害を生ずるおそれがあるときは、工事現場の周囲を鉄網又は帆布で覆う等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。

 

建設工事講習災害防止対策要綱

外部足場から、俯角75度を超える範囲又は水平距離5メートル以内の範囲に隣家などがある場合には、足場の必要な部分を鉄網若しくは帆布で覆い又はこれと同等以上の効力を有する防護措置を講じなければならない。

 

足場からの落下防止のための安全ネットの設置

足場には床と建地との隙間を12cmとしていてもメッシュシート等の作業床の隙間から工具や部材が落ちる危険が残るため、別途この隙間からの飛来・落下措置を講ずる必要があります。

 

足場からの落下事故は足場の両側から起こる可能性があるため、足場の外側、建物側両方に措置を行う必要があります。

 

足場の建物側では落下防止ネットまたはメッシュシートなどの設備を設置することが規定されています。

 

壁面に対して水平に落下防止ネットを設置することで墜落事故を防止できます。
この際、落下防止ネットを設置するための専用ブラケットを使用します。

 

安全ネットを設置する目的

1.勾配屋根、足場からの墜落防止
2.足場上での作業で躯体と足場作業床の間隔が広い箇所には足場躯体間に層間養生ネットを取り付けます。
3.低層住宅等建築工事の際は、2階の建て方作業を行う前に1階から2階の梁などを利用して安全ネットを取り付け、墜落防止を図ります。

 

安全ネットの取り付け方法

安全ネットの構造

網地…網目が多数連続している
結節…網目の頂点を形成する網糸の結び目
縁綱…ネット周辺を形成する綱
仕立糸…網地と縁綱を結びつける糸
つり綱…支持点にネットを取り付ける綱

 

安全ネットの定義

1.ネットは縁綱、仕立糸、つり綱、試験用糸等を有するもの
2.ネットの材料は合成繊維とする
3.網目は辺の長さを10cmとする
4.網地はずれることのない結節がされている
5.縁綱を周辺の網目を通したあと、ずれないよう仕立糸で網糸と結びつける
5.縁綱とつり綱との接続は3回以上のさつま編み込みで結ぶ方法、またはこれと同等以上に確実な方法で行う

 

ネットの取り付け方法

厚生労働省安全ネットの構造等に関する安全基準では、ネットを取り付ける際、事前にどの範囲の作業者の墜落防止措置をするか十分に検討してから設置します。

 

ネットは安全性を高めるため、ネット周辺のあきはなるべく20cm以内になるように取り付けます。

 

また、複合ネットにする場合はそれぞれの縁綱を20cm以下の間隔で強く結びます。

 

幅木の設置

平成21年に労働安全衛生規則が改正され、足場からの墜落防止措置や物体の落下防止措置の充実として、幅木の設置が盛り込まれました。

 

この法改正では高さ2m以上の作業場所に設けられる作業床では、建地と床材の隙間は12cm未満とすることが追加されました。
しかし、隙間が12cm未満でも工具等の落下する危険性があるため、幅木を設置して隙間からの落下防止措置を講じます。

 

幅木の種類

幅木にはI型幅木とL型幅木の2種類があり、それぞれ構面側と妻面側で分かれています。

 

・I型幅木(第1種)

本体と取り付け部からなる幅木で、取り付け部がコの字になっており、布枠の金具に取り付けます。
工具を使わずに取り付けが可能です。

 

・L型幅木(第2種)

水平部を有しているL字型の幅木です。
脚柱と布板の隙間を塞げるタイプで、作業床に乗せて使用します。

 

手すり先行工法

手すり先行工法は、足場の組立て・解体いずれの場合も、常に手すりがある状態で作業ができるようにするための工法です。

手すりが常にあることで、足場からの墜落・転落を防止できる画期的な工法となっています。

 

手すり先行工法にはガイドラインがあり、ガイドラインに従って組み立てる必要があります。

 

手すり先行工法の種類

手すり先行工法には「手すり先送り方式」、「手すり据置き方式」、「手すり先行専用足場方式」の3つの方式があります。

 

手すり先送り方式

「先送り手すり機材」という部材を使う方式です。

 

足場の最上層に作業床を取り付ける前に、1層下の作業床上から、建枠の脚柱等に沿って上下スライドが可能な先送り手すり機材を作業床の端に先行して設置します。

 

最上層の作業床を取り外すときは先送り手すり機材を残置して行います。

 

手すり据置き方式

「据置手すり機材」をと呼ばれる部材を使う方式です。

 

足場の最上層に作業床を取り付ける前に、1層下の作業床上から、据置手すり機材を作業床の端に先行して設置します。

最上層の作業床を取り外すときは据置手すり機材を残置して行います。

 

手すり先行専用足場方式

鋼管足場用の部材や付属金具の規格の適用除外が認められた枠組足場等で、手すり先行工法を行う機能を有する手すり先行専用のシステム足場による方式です。

 

足場の最上層に作業床を取り付ける前に、1層下の作業床上から、手すりの機能を有する部材を設置します。

最上層の作業床を取り外すときは手すりの機能を有する部材を残置して行います。

 

足場は十分な墜落・落下防止措置が必要

足場からの墜落、落下は大事故に繋がるおそれがあります。
作業員や周辺の住民、通行人や建物を守るため、法令に基づいた十分な墜落・落下防止対策が必要です。