足場は設置しただけで違法になるわけではない
建物の新築や外壁塗装、屋根工事、修繕工事などでは、高い場所で安全に作業するために足場が設置されます。足場そのものは工事に欠かせない仮設設備であり、設置しただけで違法になるわけではありません。ただし、法律で定められた安全基準を守っていない場合や、必要な許可を取らずに道路へはみ出している場合などは、法令違反と判断される可能性があります。
「隣の工事現場の足場が危なそう」「自宅の敷地に無断で足場が入っている」「道路をふさいでいるように見える」といった状況では、不安を感じる方も多いでしょう。しかし、外から見ただけでは適法か違法かを判断しにくいケースもあります。足場には、労働者の安全を守るための労働安全衛生関係法令のほか、道路法、道路交通法、民法上のルールなどが関係するためです。
足場が違法かどうかを確認する際は、単に見た目だけで判断せず、安全設備、設置場所、許可の有無、隣地への越境、作業方法などを総合的に見る必要があります。まずは、どのような状態が問題になりやすいのかを理解しておきましょう。
安全基準を満たしていない足場は法令違反になる可能性がある
足場を使用する工事では、作業員が高所から転落したり、足場材や工具が落下したりする危険があります。そのため、事業者には作業床、手すり、墜落制止用器具、昇降設備などを適切に設け、足場の状態を点検することが求められています。高さ2メートル以上の場所で墜落のおそれがある作業を行う場合は、原則として安全な作業床を設ける必要があります。
特に注意したいのが、手すりや中桟が不足している、足場板に大きな隙間がある、壁つなぎが不十分で足場が揺れている、昇降設備が設けられていないといった状態です。メッシュシートが大きく破れている場合や、資材が通路に放置されている場合も、事故につながるおそれがあります。
また、足場は組み立てた後だけでなく、変更や一部解体をした後、強風や大雨、地震などの影響を受けた後にも点検が重要です。現在のルールでは、点検者をあらかじめ指名し、点検結果や必要な補修内容、点検者の氏名などを記録して保存することが求められています。安全基準を軽視したまま作業を続けると、行政から是正を求められるだけでなく、事故発生時に重大な責任を問われる可能性があります。
一側足場を安易に使用すると違法になることがある
住宅工事では、敷地が狭いことを理由に、一側足場と呼ばれる比較的幅の狭い足場が使われることがあります。一側足場とは、支柱を片側に設け、そこからブラケットなどを張り出して作業床を支える構造です。狭小地に設置しやすい一方で、本足場と比べて作業床が狭くなりやすく、安全性に十分配慮しなければなりません。
令和6年4月1日からは、足場を設ける場所に幅1メートル以上の余裕がある場合、原則として本足場を使用することが必要になりました。本足場とは、建物側と外側の二列に支柱を設ける構造で、安定した作業床を確保しやすい足場です。十分な設置スペースがあるのに、費用や作業の都合だけで一側足場を選ぶと、法令上の問題が生じる可能性があります。
ただし、敷地条件や障害物の位置などによって、本足場の設置が難しい場合もあります。そのため、一側足場が使われているだけで直ちに違法とは限りません。設置場所の幅、建物の形状、使用する足場の構造、安全対策などを確認する必要があります。工事を依頼する側は、足場の種類だけで判断せず、施工会社に選定理由や安全対策を説明してもらうと安心です。
道路にはみ出す足場は許可が必要
敷地内だけでは足場を設置できず、歩道や車道の上空を含む道路区域へ足場がはみ出すケースがあります。この場合、道路を継続的に使用するための道路占用許可が必要です。さらに、足場の組立てや解体で車両や作業員が道路を使用し、交通に影響を与える場合には、警察署長による道路使用許可も必要になることがあります。
道路占用許可は道路管理者、道路使用許可は所轄警察署へ申請するもので、役割が異なります。どちらか一方を取得すればよいとは限らない点に注意が必要です。許可を取らずに歩道へ支柱を立てたり、通行スペースを著しく狭めたりすると、違法な道路占用として指導や撤去の対象になる可能性があります。
許可を受けた足場でも、歩行者用の通路、視認性、安全な高さ、落下物への対策など、指定された条件を守らなければなりません。現場によっては、仮囲い、保護棚、誘導員、夜間照明などが必要です。道路にはみ出している足場を見つけた場合は、許可標識や工事案内を確認し、不明な点があれば施工会社や道路管理者へ問い合わせるとよいでしょう。危険を感じても、足場に触れたり自分で動かしたりしてはいけません。
隣の敷地へ無断で足場を設置することも問題になる
建物が隣地との境界ぎりぎりに建っている場合、自分の敷地内だけでは外壁工事に必要な足場を組めないことがあります。その際、隣の土地に足場の一部を置いたり、作業員が立ち入ったりするケースがあります。工事のために隣地を使用する必要があっても、施工会社が自由に無断使用できるわけではありません。
民法には、土地の所有者が境界付近の建物を築造または修繕するため、必要な範囲で隣地の使用を求められる仕組みがあります。ただし、隣地所有者への事前通知や、使用する日時、場所、方法などへの配慮が必要です。住居へ立ち入る場合は、原則として居住者の承諾が求められます。また、隣地に損害を与えた場合は、補償が必要になることもあります。
実際の工事では、口頭だけで済ませず、足場を設置する範囲、期間、養生方法、破損時の対応などを書面で確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。無断で足場が設置された場合は、感情的に撤去したり足場材を動かしたりせず、まず施工会社や施主へ状況を確認しましょう。話し合いで解決しない場合は、自治体の相談窓口や法律の専門家へ相談する方法があります。
足場が違法か不安なときに確認したいポイント
足場の適法性を一般の方が正確に判断するのは簡単ではありません。ただし、危険な現場や手続きに問題がある現場には、いくつかの共通した特徴があります。工事を依頼する場合も、近隣の足場に不安を感じた場合も、次の点を落ち着いて確認しましょう。
・足場に大きな傾きや激しい揺れがないか
・作業床や手すり、昇降設備が整っているか
・部材や工具が落下しそうな状態になっていないか
・道路上の足場に許可や安全対策が確認できるか
・隣地へ越境する場合に事前説明が行われているか
・強風や大雨の後も安全確認が行われているか
・作業員が危険な方法で上り下りしていないか
明らかな危険が迫っている場合は、現場へ近づかず、施工会社や工事の発注者へ連絡します。道路上の問題は道路管理者や警察、安全管理上の問題は労働基準監督署が相談先になる場合があります。緊急性が高く、人の生命や身体に危険が及ぶ状況では、警察や消防への連絡も検討してください。
足場の違法性は、設置方法だけでなく、点検、許可、越境、作業手順などによって判断されます。安さだけで施工会社を選ばず、資格や保険、安全管理体制、近隣対応まで確認することが大切です。適切な足場は、作業員だけでなく、施主や近隣住民、通行人の安全も守ります。不安な点を放置せず、早い段階で確認することが事故とトラブルの予防につながります。