建設現場で使用される足場にはくさび式足場、枠組足場、単管足場、吊り足場などがあります。
なかでもくさび式足場はハンマー1本でスピーディーに組み立てられ、低層住宅から中層建築まで幅広く利用されている足場です。
ここでは、くさび式足場の特徴、種類、主要な部材やほかの足場との違いなどについて解説します。
くさび式足場(くさび緊結式足場)とは
くさび式足場は一定間隔に緊結部を備えた支柱となる鋼管に、くさび形の凸部がついた手すりや斜材等をハンマーで打ち込んで緊結する足場です。
くさび式足場はすべてがユニットタイプとなっているため、ハンマー1本で組み立てることが可能です。
クランプなどの部材が必要ないため、簡単にスピーディーに足場の組立て・解体ができ、ほかの足場よりも作業時間を短縮でき、コストを抑えることができます。
また、建物の形状に対応しやすいため、複雑な形状の建物にも対応できます。
組み立てにクレーンも必要ないため、出入り口の狭い場所でも設置が可能な小回りの利きやすい足場です。
くさび式足場にはビル工事用と住宅工事用がある
くさび式足場にはビル工事用と住宅工事用があり、それぞれ高さ制限と技術基準が定められています。
ビル工事用
くさび式足場のうち、ビル工事等の建築・補修・解体工事等に使用される、高さ31m以下で使用する本足場です。
住宅工事用
くさび式足場のうち、軒の高さ10m未満の低層住宅の建築・補修・解体工事等に使用する足場です。
ビル工事用と住宅工事用とでは高さ制限だけでなく、設置基準がそれぞれ定められています。
足場の設置の際には目的に応じてそれぞれのガイドラインを守って施工する必要があります。
くさび式足場の主要な部材
ジャッキベース
ジャッキベースは足場の最下部で足場の足となる部材です。
集中荷重による足場の沈下を防ぎます。
ジャッキには高さを調節する機能があり、足場を水平に安定させる役割があります。
支柱
くさび式足場の支柱は鋼管に緊結部が一定間隔についています。
緊結部に部材のくさびを打ち込むことにより足場を組み立てることができます。
支柱はくさび受けの向きが同じ方向になるようにジャッキベースに差し込んで設置します。
手すり
くさび式足場の手すりは左右にくさびが付いています。
このくさびを支柱の緊結部に打ち込んで設置します。
踏板
踏板は作業員が歩く床となる部材です。
両側に合計4個のフックが付いています。
地上第一段目の踏板は、2m以下に設置します。
踏板は段差のないように連続して設置し、建物から足場までの隙間は30cm以内とします。
ブラケット
ブラケットは固定型、伸縮型、張り出し型があります。
水平材や斜材、垂直材や建地に取り付けるための2個のくさびにより構成されています。
筋交
筋交いは足場が倒壊しないように柱と柱の間に斜めに入れる部材です。
地震や台風による横揺れに対応できるよう補強として必要となります。
階段
足場の上階と下階を行き来するための階段です。
フックを鋼管にひっかけて設置します。
先行手すり
手すりと筋交の役割を持っている資材で、足場の組立て・解体時に常に手すりがある状態で作業ができるため、安全に作業をすることができます。
くさび式足場の組立てでは手すり先行工法を採用することが用いられています。
くさび式足場とほかの足場の違い
くさび式足場と単管足場の違い
単管足場は単管パイプにクランプなどで部材をつなげて組み立てる足場で低層用に用いられます。
高層用には使えませんが、足場の形状を柔軟に変化させるため、狭い場所や複雑な形状の場所でも設置することができます。
くさび式足場はクランプのような繋ぎ用部材が必要ないのでハンマー1本で組み立てることができますが、組立て・解体時に金属を叩く大きな音が響きます。
一方、単管足場はクランプを締め付けて組み立てるため、くさび式足場のような大きな音は響きません。
くさび式足場と枠組足場の違い
枠組足場は鋼管を門型に溶接した建枠に、基本部材を使って組み立てる足場で、部材の強度が強いため、45m以下の高層用に適しています。
くさび式足場よりも高層の建物にも対応でき、ユニットを組んだあとクレーンを使って組み上げていきます。
また、枠組足場も組み立て時にくさび式足場のような大きな音は発生しにくい足場です。
ただ、くさび式足場に比べて組立て時にある程度のスペースが必要なため、狭い場所では設置が困難になります。
足場の組立てには特別教育の修了が必要
足場上の作業は高所作業にあたり、足場からの転落や墜落、組立て不備による足場の倒壊などの労働災害が多発しています。
これらの労働災害の防止を強化するために平成27年7月1日より労働安全衛生規則が一部改訂され、足場作業に関わる作業員には「足場の組立て等作業従事者特別教育」の修了が義務付けられました。
足場の組立て等作業従事者特別教育が必要な業務
足場の組立て、解体、変更等の作業が発生する業務では特別教育が必要です。
これは足場の高さには関係はなく、低い足場でも足場を使う以上は特別教育の修了が必要です。
また、移動式足場の場合も足場に該当するため、特別教育が必要です。
講習内容
特別教育の講習は合計6時間となります。
すべての科目を受講したあと、発行される修了証を受領すれば足場特別教育の資格取得となります。
試験はありませんが、足場の組立て等に関する重要な内容の講義となりますので、しっかりと聞いておく必要があります。
足場特別教育の科目と講習時間
1.足場及び作業の方法に関する知識…3時間
2.工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識…30分
3.労働災害の防止に関する知識1時間30分
4.関係法令…1時間
くさび式足場は幅広く使えるコストパフォーマンスが高い足場
くさび式足場の特徴やその他の足場との違いについて解説しました。
くさび式足場はクランプなどの部材が必要なくハンマー1本でスピーディーに組み立てられる足場です。
結束もコンパクトのため、輸送コストも下げられ、高いコストパフォーマンスを実現することができます。
また、複雑な形状の建物にも対応できるため、幅広い建築物に適した足場です。