足場の倒壊を防ぐため、足場と壁を繋ぐなどの安全対策が必要です。
このときに利用するのが、アンカーや壁つなぎなどの部材となります。
ここでは、足場のアンカー、壁つなぎとは何か、それぞれの設置方法や設置基準について解説します。
足場のアンカーとは
足場で使用されるアンカー(アンカーボルト)とは足場を固定するためにコンクリートに埋め込んで使用するボルトのことです。
足場のアンカーは壁つなぎを使ってアンカーと足場を繋ぐことにより、建物と繋がった足場が転倒・変形することを防ぎます。
アンカーは種類が多くあり、鉄、ナイロン、ステンレス、鋼材など、重さや耐力によりバリエーションが存在するため、建造物の材質や使用目的により適切なものを選ぶ必要があります。
足場のアンカーの施工方法
足場アンカーの施工方法には「埋込式」と「打込式」の2つの方法があります。
埋込式
埋込式は一般的なアンカーの設置方法で、従来から行われています。
しかし、埋込式は施工に技術力が必要で、施工可能な業者が限られています。
打込式
打込み式はコンクリートの基盤を造り、適正な強度になったことを確認したうえでアンカーを打ち込む方法で「施工アンカー」とも呼ばれます。
下穴を開けたあと、コンクリートドリルで既定の深さの穴を開け、設置します。
壁つなぎとは
壁つなぎとは、足場を壁などに固定するための措置、またはそのためにアンカーと共に使用される部材のことです。
壁つなぎに用いる部材は「壁つなぎ専用金物」と呼ばれるものがあります。
しかし、建物の構造や工事の内容によっては壁つなぎ専用金物を使用できず、単管パイプなどを使って建物と足場を固定します。
壁つなぎの設置方法
壁つなぎの取り付け方には専用金物を使用する方法のほか、キャッチクランプ、単管パイプで固定する方法があります。
壁つなぎ専用金物を使用した設置方法
壁つなぎ専用金物は、片方がクランプ、もう片方が雄ねじになっている部材で、クランプ側がジャッキ構造になっており、足場と建物の距離により長さを調節できるようになっています。
壁つなぎの先端ボルトはインサートに最後までねじ込み、取り付け面にできるだけ直角になるように取り付けます。
クランプを足場の建地に取り付ける場合はラチェットスパナ等の専用工具を使用します。
キャッチクランプを使用した設置方法
壁つなぎ専用金物を使用せずに単管パイプとクランプで固定する方法もあります。
クランプは壁つなぎ専用金物よりも耐力が低いため、S造等で盛替えが発生する場合は盛替え前後で同じ位置に壁つなぎは取りません。
単管パイプの壁つなぎ、盛替え後の壁つなぎそれぞれで強度を検討する必要があります。
単管パイプ挟み込みによる設置方法
単管パイプでF字型の形状を作り、単管パイプで躯体を挟み込む方法です。
パラペットの部分や解体工事の際によく見られる壁つなぎの形になります。
壁つなぎの設置基準
壁つなぎについては労働安全衛生規則に定められています。
安衛則570条では、
「一側足場、本足場又は張出し足場であるものにあっては、次に定めるところにより、壁つなぎまたは控えを設けること」
としています。
壁つなぎの設置間隔
労働安全衛生規則では、単管足場、くさび式足場の壁つなぎの間隔は垂直方向5.0m以下、水平方向5.5m以下の間隔と定めています。
枠組足場の間隔は垂直方向9m以下、水平方向8m以下となっています。
なお、枠幅600mm未満の簡易枠組足場の場合、垂直、水平工法ともに5.5m以下です。
風荷重が大きい場合
風荷重が大きい場合は、足場の構造が軟弱化し倒壊を防ぐために、高さ基準が3.6m以下となります。
風が強く吹く暴風域に入っている場合にはこの基準が適用されますので、台風の襲来時や強風のときなどには基準の変化に対応する必要があります。
躯体側に制約がある場合
壁つなぎは躯体側の設置場所にも制約があります。
足場と躯体の位置関係によっては壁つなぎが設置できないケースがあります。
この場合は壁つなぎを取り付ける位置をずらし、壁つなぎの間隔が設置基準を満たすようにする必要があります。
住宅工事用の場合
住宅の新築工事では先行足場を多く用います。
そのため、足場自体の自立安定性がしっかりしている必要があります。
一般住宅では壁つなぎの設置そのものを嫌がられるケースが多く、そもそも設置が難しいのが現状です。
そのため、足場控えが設けられない場合は、全周緊結構造を基準とするように定められています。
家をぐるりと取り囲む先行足場が住宅の建築で採用されるのはこのためです。
先行足場は建築よりも先にすべて組み立てる必要があります。
そのため、通常の足場組み立てとは異なったスケジュールを立てる必要も出てきます。
足場の控え(やらず)とは
足場の控え(やらず)とは、足場が強風や揺れなどによって倒壊しないように支柱の外側に取り付ける補強材のことです。
アンカー打ち込みや溶接が困難な建物で壁つなぎの設置ができない場合などに使用します。
控えは設置位置が低すぎるとその効果が足場の上部に及びません。
逆に設置位置が高すぎると力のベクトルにより、その効果が減殺されてしまいます。
控えは壁つなぎと同様に支柱と踏板の交点付近に設置するとその効果を最大限に発揮できます。
また、控えと地面と建地で直角三角形を作る際に三角形が崩れないようにできるだけ地面に近い位置に水平材を設けます。
控えの地面側の下端部にはジャッキベースを差し込み、控えが地面に沈下しないようにするとともに、ジャッキベースのハンドルを締め、地面との緊張状態を作ります。
控えは足場の外側への傾きを防止するものですが、水平材に杭を打ち込むことで足場の建物側への倒壊防止にも効果があります。
足場の安全措置に関しては労働安全衛生規則で規定されている
足場を安全に使用するため、労働安全衛生規則で足場の設置、安全に使用するための基準が定められています。
足場に関しては労働安全衛生規則第563条(作業床)、564条(足場の組み立て等の作業)、565条(足場の組み立て等作業主任者の選任)、第566条(足場の組み立て等作業主任者の職務)、567条(点検)などでルールが規定されています。
足場の組み立て時には最新の法律に従って安全に組み立て作業を行うことが義務付けられています。
アンカー・壁つなぎは足場を安全に設置するための措置
足場のアンカーや壁つなぎ、控えの設置基準や設置方法について解説しました。
足場の倒壊を防ぐためには適切な措置を講じることが法律で定められています。
アンカーや壁つなぎを基準に合わせて設置すること、アンカーや壁つなぎが設置できない環境ではそれに応じた対応を基準に合わせて行う必要があり、足場の安全性の確保が求められています。